映画「イヴ・サンローラン」

去年の年末、ちょうど私が映画「イヴ・サンローラン」を始めて映画館で観た日の一年後、アマゾンで入手した
「Lettres a Yves」の和訳に取り掛かりました。
これはピエール・ベルジェがサンローランの葬儀のときに彼に贈った言葉から始まり、日記形式で都度自分の思いを語りかけたものです。

ベルジェ氏は詩作や文学に造詣が深く、その文章も日記形式とはいえ格調高く、辞書を片手に夢中になって正月を過ごしました。
その行間からはサンローランに対する深い愛、けれども彼を守りきれなかった後悔が痛いほど滲んでいます。
それを見事に描いたのが映画「イヴ・サンローラン」なのだと改めて思いました。
この映画は監督自らが言っているように「愛」をテーマにしています。

映画そのものは素直な作りで、サンローランのデザイナーとしてのはじまりと終わりを時系列で描いているのですが、サンローランに対するオマージュは勿論のこと、でも本当はピエール・ベルジェがもうひとりの主人公ではないかと思います。私が狂ったように夢中になったのはそれが理由だと気がつきました。

神から与えられた創造の才と引き換えにガラス細工のように繊細な神経を持ち、それが故に自ら破滅に向かうしかなかった人を愛してしまった運命、その人を守ることを自分の生涯の役割として恋人の死後もそれを全うしようとしているベルジェ氏の心中を実に見事に演じたのはギヨーム・ガリエンヌという役者です。