映画「イヴ・サンローラン」の続き

ギヨーム・ガリエンヌはフランスで最も由緒あるパリの王立劇団コメデイー・フランセーズの舞台俳優です。

ちなみにサンローランを演じた役者も同じコメデイー・フランセーズの若手俳優です。

このギヨーム・ガリエンヌは2014年、邦題「不機嫌なママにメルシイ!」でセザール賞5部門を制覇した凄い俳優で、同映画は勿論、それに先駆けて自ら脚本、演出も手がけた舞台では登場人物全員をひとりで演じ分けるといる離れ業をやっています。
本人は映画「イヴ・サンローラン」では実際のベルジェ氏に特に似せることは意識していなかったと言っていますが、この人の目の演技が凄い!彼も演じるにあたって「Lettres a Yves」を読んだそうですが、まさにその目にベルジェ氏の思いが反映されています。

コレクションのショーの舞台裏で不安に慄きながら客の反応を窺うサンローランに兄のように、父のように、そしてこの上なく彼を愛する恋人として彼に送るまなざし。
サンローランとデイオール社時代からの彼のミューズでメゾン設立に尽力したマヌカンのヴィクトワールが戯れる姿に嫉妬を滲ませ、見つめるまなざし。

裏でサンローランの不倫相手ジャックに彼との関係を断ち切らせたために連絡がつかなくなったことに怒り、ギリシャ彫刻を投げつけたあげくに制止を振り切って夜の街に出かけてしまったサンローランに対し、自分の非力さに絶望し、涙する姿。
(映像ではフェイドアウトしていますが)前述の映画「サンローラン」でのベルジェ氏は、ビジネスパートナーとして手腕を発揮し、プライベートではサンローランと性的関係を持つ場面がありますが、描き方は平板で品がありません。

世間ではこちらの姿がより近く映っているのかも知れません。
コレクションの時の彼のどなり声に皆は恐れをなしたそうですから。
又、島嶼出身の彼のしゃべり方もブルジュアのそれとは違うのでしょうから。
ギヨーム・ガリエンヌ本人はブルジュア出身ですが、その辺りの演じ分けも勿論しています。
けれどそれより大事なことをより強く意識して演じた結果、すばらしい映画になったのだと思います。
この映画を観た人が同じように思って下されば嬉しいです。